ここ数年の夏は気温が異常に高く、人はもちろんのこと、車にとっても過酷な状況が続いています。人は、エアコンさえつけてしまえば、それなりに快適に過ごすことはできますが、車にはそういったことはありません。私自身はオーバーヒートといったものを経験したことはありませんが、水温の値がリアルに表示されることのない車の方が圧倒的に多いのでドライバーが気を付けてあげなければいけないのです。
私も含めて、一般車にとってはラジエーターを大きくするなどできず、追加でファンをつけることもできず、バンパーやボンネットを加工して放熱対策をすることもできないはずです。限られた対策としてできることと言えば、より高品質のクーラントを入れたり、ラジエーターキャップを交換したりすることしかできません。
本日は、ラジエーターキャップについての話題です。
ラジエーターキャップの役割
ラジエーターキャップは、単なるラジエーターの蓋にすぎない思っている方も多いかもしれません。実際に私自身もそのように思っているところはありました。
当然のことですが、ラジエーターキャップをより良いものに交換したからといって馬力が上がったりすることはありません。もちろん、車の動きが変わったり、何かが良い方向に進むといったことも残念ながらありません。地味なパーツではありますが、自動車にとっては大切な働きをしてくれるのです。

ラジエーターキャップの働きは、ラジエーターの内部の圧力(内圧)を適正に保つことです。圧力を適正に保ってくれるということは、変化させるということです。
ラジエーターキャップが働くメカニズムを簡単に書くと次のとおりです。
- 冷却水を高圧力で密閉して沸点を上げる
- ラジエーターの内圧が上がりすぎた場合は、一部の冷却水をリザーブタンクへ
- 冷えてラジエーターの内圧が下がりすぎた場合は、リザーブタンクからラジエーターへ冷却水を戻す
- 冷却水が沸騰するのを防ぎ、オーバーヒートを防ぐ
内圧が上がると、加圧弁が作動します。一方で、内圧が下がると負圧弁が作動します。加圧弁と負圧弁の2つの弁がきちんと作動することによって内圧を調整してくれているのです。
編集長のミライースのラジエーターキャップは、D-SPORTの製品に変更してあります。変更前は純正のキャップでした。

純正のキャップをよく見ると、「1.1」という数字が書かれています。次に変更したキャップを見てみます。

D-SPORTのキャップには、「1.3」という数字が書かれています。数字は0.2だけ大きくなりましたが、どういった意味なのか解説させていただきます。
ラジエーターキャップに書かれた数字の意味するもの
ラジエーターキャップには、2つの単位で数字が書かれています。1.1も、1.3も、127も、これらは全て開弁圧の値を指しています。単位が違うだけです。
| 開弁圧(kg/㎠) | 開弁圧(kpa) |
|---|---|
| 1.0kg/㎠ | 100kpa |
| 1.1kg/㎠(1.10129) | 108kpa |
| 1.3kg/㎠(1.29504) | 127kpa |

大気圧の条件では開弁圧は、1.0kg/㎤(100kpa)と言われています。
それぞれの条件下での沸点を付け加えてみます。
| 開弁圧(kg/㎠) | 開弁圧(kpa) | 沸点 |
|---|---|---|
| 1.0kg/㎠ | 100kpa | 100℃ |
| 1.1kg/㎠(1.10129) | 108kpa | 120℃ |
| 1.3kg/㎠(1.29504) | 127kpa | 130℃ |
キャップ変更前と比べて、沸点は約10℃上がって、よりオーバーヒートしにくくなったと言えます。
ラジエーターキャップを交換するメリット・デメリット
ここまではラジエーターキャップを交換するメリット的なものしか書いてきませんでした。でも実際にはメリットだけでなく、デメリットも存在するのです。
ラジエターキャップを交換するメリットとしては次の3点です。
- オーバーヒートに対する有効な対策であること
- オーバーヒートしにくくなるという心理的な面
- 車を壊しにくくなるため、修理代が抑えられる可能性が高い

次はデメリットです。メリットもデメリットも両方考えるようにすべきです。
交換するデメリットとしては次の2点です。
- キャップだけ変えても、他のパーツがラジエターの内圧に耐えれられない可能性がある
- 経年変化によりラジエター本体およびホース類が劣化していると水漏れ等が発生する場合がある
なお、ラジエターキャップの交換時期の目安としては、何か気になることがあったとき、また下記の症状があったときで問題ないでしょう。
- キャップに錆などが付着している
- ゴムパッキンに傷や亀裂がある
- 負圧弁にゴムパッキンが張り付いている
- 負圧弁を引っ張っても元に戻らない
- なぜだか分からないけどオーバーヒートを繰り返してしまう
- ラジエーターの冷却水の減りが異常に早い
- 冷却水を交換したとき
- ラジエーター交換を含めた冷却系の強化をしたとき
自分で交換する場合は、①ラジエーターが熱いときは交換しない・②自分の車のラジエーターに適合するラジエーターキャップを取り付ける(適合表できちんと確認をする)という2点に注意しましょう。
ラジエーターキャップの主要ブランド
ラジエーターキャップにも色々なメーカーが存在します。
D-SPORT
ダイハツ車といえば、D-SPORT車のパーツを使っている方は多いです。実際、私自身もパーツをいくつか使用しています。D-SPORTはダイハツ車専用のカスタマイズブランドとして定着していますが、近年はコペンでWRCへ参戦するなどモータースポーツ活動を展開していたり、エンドユーザー向けのサーキットイベントを開催するなどして、モータースポーツを盛り上げる取り組みも行っています。

ついつい「D-SPORT」と聞くと、ダイハツの「D」と思われがちですが、実は違います。2つの会社に資本関係もありません。ちなみに、D-SPORTは、車関係の商社であるSPK株式会社の中の1つの事業部門だと考えると分かりやすいですよね。

2025.11.17時点で確認できたラジエターキャップは、3つのモデルでした。ただし、全てダイハツ車向けに特化したラインナップになっており、他メーカーでの適合は明らかになっておりません。(OEM車を除く)
| 製品 | 品番 | 開弁圧 | 対応車種 |
|---|---|---|---|
| スーパーラジエーターキャップ 1.1K | 16401-C011 | 108kPa(1.1kg/㎠) | 汎用、コペン、ムーブ、ミラ、タフト、タント、ブーンほか |
| スーパーラジエーターキャップ Type-B 127kPa | 16401-C020 | 127kPa(1.3kg/㎠) | アトレー、ハイゼット、 ロッキー、ブーン、トールほか |
| スーパーラジエターキャップ | 16401-C010 | 127kPa(1.3kg/㎠) | 汎用、コペン(LA400K・LA400A・L880K) |
NTK
NTKと聞くと、車好きのほとんどの方はスパークプラグを思い浮かべるのではないでしょうか。実は、ラジエターキャップも製造しているといったことを知らない人も多いはずです。
2025.11.17時点で確認できたラジエターキャップは、5つのモデルでした。ただ、純正と同等の規格(開弁圧)ですのでオーバーヒート対策としてはあまり適しません。
| 製品 | 開弁圧 | 対応車種 |
|---|---|---|
| P519A | 88kPa(0.9kg/㎠) | 汎用 (軽自動車には該当車種なし) |
| P539A | 88kPa(0.9kg/㎠) | 汎用、アルト、R1、R2、ハイゼット、 キックス、MRワゴンほか |
| P541A | 108kPa(1.1kg/㎠) | 汎用、アルト、スペーシア、ハイゼット、NV100クリッパー、デイズほか |
| P559A | 88kPa(0.9kg/㎠) | 汎用、アルト、スペーシア、ハイゼット、ミラ、ムーヴ、 |
| P561A | 108kPa(1.1kg/㎠) | 汎用、アルト、エッセ、コペン、タント、ハイゼット、ミラ、ムーヴ、 |
SARD
国内最高峰のハコ車のレースである「SUPER GT」などでも「SARD(サード)」という名前を聞いたことのある人は多いのではないでしょうか。

個人的には「TOYOTA」と「DENSO」とタッグを組んでいるイメージが強いです。
ラジエターキャップのラインナップはあるものの、基本的には大排気量の典型的なスポーツカー向けの車種設定ばかりでした。2025.11.18時点で確認できたラジエターキャップは3つのモデルでしたが、軽自動車に向けたラインナップは確認できませんでした。
| 製品 | 品番 | 開弁圧 | 対応車種 |
|---|---|---|---|
| ハイプレッシャー ラジエーターキャップ | SHP05 | 127kPa(1.3kg/㎠) | 軽自動車への適合は 確認できませんでした |
| ハイプレッシャー ラジエーターキャップ | SHP06 | 127kPa(1.3kg/㎠) | 軽自動車への適合は 確認できませんでした |
| ハイプレッシャー ラジエーターキャップ | SHP07 | 147kPa(1.5kg/㎠) | 軽自動車への適合は 確認できませんでした |
HKS
HKSはチューニングパーツメーカーとして知名度が高い会社の1つです。2025.11.18時点で確認できたラジエターキャップは、3つのモデルでした。
ただし、純正と同等規格の性能ですのでオーバーヒート対策にはなりません。
| 製品 | 品番 | 開弁圧 | 対応車種 |
|---|---|---|---|
| ラジエーターキャップ Sタイプ1.1Kg | 15009-AK004 | 108kPa(1.1kg/㎠) | アルトワークス、ハスラー、カプチーノ、プレオほか |
| ラジエーターキャップ Nタイプ1.1Kg | 15009-AK005 | 108kPa(1.1kg/㎠) | アルトワークス、アルトターボ、ハスラー、ミライースほか |
| ラジエーターキャップ Sタイプ0.9kg | 15009-AK006 | 88kPa(0.9kg/㎠) | ミラ、プレオ、R1、R2、ステラほか |
| ラジエーターキャップ Nタイプ0.9kg | 15009-AK007 | 88kPa(0.9kg/㎠) | ジムニー、ワゴンRほか |
billion
billionは冷却系のパーツに強みを持つ会社です。2025.11.18時点で確認できたラジエターキャップは、2つのモデルでした。いずれの製品も開弁圧は127kPaですので、オーバーヒート対策として活用ができますが、適応品番表があまりメンテナンスされていない部分もありますので、店頭で確認をしてからの購入をお勧めします。
| 製品 | 品番 | 開弁圧 | 対応車種 |
|---|---|---|---|
| ハイプレッシャー ラジエターキャップAタイプ | BHR-01A | 127kPa(1.3kg/㎠) | ハイゼット、アルト、カプチーノ、ジムニー、ライフほか |
| ハイプレッシャー ラジエターキャップBタイプ | BHR-02B | 127kPa(1.3kg/㎠) | ミラ、ムーヴ、コペン、アルト、ライフ、ほか |

いずれのブランドであっても購入する際は必ずそれぞれのメーカーの適応品番表(適合表)を確認してから購入をするようにしましょう。
【本記事のまとめ】ラジエーターキャップの交換は効果的ではあるもののそれだけだけやはり効果は薄い
ラジエーターキャップの役割の1番の目的はオーバーヒートの防止にありました。
加圧弁と負圧弁、2つの弁が適切に作動して、初めてラジエーターの内圧だったり、冷却水の調整をきちんとしてくれるのです。定期的なチェックや交換をお勧めします。とはいえ、ラジエーターキャップ1つだけでオーバーヒート防止になるわけではありませんし、キャップの開弁圧だけを上げれば、他の冷却系のパーツに対する負荷は大きくなります。
冷却システムをグロスで捉えてあげる必要があります。特に、マイカーでサーキットを定期的に走るような場合はなおさらです。とはいっても、普段の足としてマイカーを使っているような場合はラジエーター交換なども簡単にできるわけではありませんので、冷却水を定期的に交換してラジエーターキャップを替えてあげたり、こまめにリザーブタンクの冷却水量をチェックしてあげたり、まずはマメなメンテナンスをすべきだと言えます。

あまりナーバスになりすぎてもいけませんが、デジタル表示の水温計で日頃のコンディションを見てあげることも大切ですね!
















水は圧力によって沸点が変化します。もっと具体的にいえば、圧力をかけるほど沸点が高くなるのです。圧力を高くして、沸点を上げることで、結果的にはオーバーヒートを防いでくれるのです。